中原中也は大好きな詩人です。彼の詩の中に「ビール」が登場する作品があります。
渓流(たにがは)で冷やされたビールは、
青春のように悲しかった。
で始まる『渓流(たにがは)』という詩が好きでした。なんで好きなのかと今考えたら、「ビール」が出てくるからじゃないかと(笑)
渓流で冷やされたビールなんて、いかにもおいしそうじゃないですか。ビショビショに濡れて、とれそうになっているレッテルという記述があるので、これは瓶ビールですね(というか時代的に缶ビールは登場していないかも^^;)。キラキラした渓流に瓶ビールが冷やされて・・考えただけでおいしそうです。
中原中也は1907年(明治40年)生まれ。1937年(昭和12年)に30歳という若さで夭逝しました。この時代のビールは高価なものでした。昭和初期の頃、月給が100円ぐらいだった時代に大瓶1本が30〜40銭したといいます。仮に月給を25万円だとすると、大瓶1本が750円〜1000円する計算になります。今の2〜3倍というところでしょうか。
作品の中で中也は、そんな贅沢品だったビールをわざわざ渓流に持ち込んで、仲間と泊まりがけでハイキングを楽しんでいる様子です。もう、考えただけでワクワクしてきますが、『青春のように悲しかった』と感じてしまいます。結局、ひとりで宿に戻って、女中(ねえさん)と話をした、でこの詩は終ります。中也の感じた透明で純粋な悲しみを癒してくれたのは、ビールじゃなくて女性だったのでしょうか。でも中也だったら女性を抱きながらでも「青春のように悲しかった」と感じてしまうかもしれません。
なーんてことを考えながら、渓流に冷やしたビールを飲みたくてたまらなくなっているわたくしでございます^^